顧客のニーズや引き合いの背景を把握するために状況質問が重要です。状況質問はどのように行えばいいのかを理解するには、佐藤昌弘著「凡人が最強営業マンに変わる魔法のセールストーク」が参考になります。220ページほどで量も多くないので読みやすく、かつ分かりやすいので営業になったばかりの人にお勧めです。
実際は、状況質問だけで終わるのではなく、クロージングまでを解説した本ですが、私的には製品引き合い時、問い合わせを受けた時に役に立つと思っている本です。
状況質問段階で役に立つ
営業全般ではなく、営業のステップを細かく分けて考えると、この本は商談で最初に行う状況把握に役立つ本だと考えています。本の構成自体は引き合い~クロージングまでのトークを解説していますが、私個人的にはこの本の醍醐味は引き合い時の対応だと考えています。
もちろん、~クロージングまでの流れやトークは参考になります。しかしながら、私は小型商談ではなく、大型商談を扱う営業をしていますので、小型商談向けのクロージングが合わないケースが多いです。
大型商談で効果的な質問段階をSPINで分けると、「状況(Situation)」、「問題(Problem)」、「示唆(Implication)」、「解決(Need Payoff)」質問ですが、この本は「状況(Situation)」段階で非常に参考になります。
SPINについては過去記事を解説していますのでご参照ください。
「魔法のセールストーク」マジッククエスチョン
この本のタイトルにもある「魔法のセールストーク」で行う質問(マジッククエスチョン)はステップ1からステップ4までの4段階で構成されています。
ステップ1の質問は、問い合わせてきた内容に対して理由を聞く、ステップ2で要望の掘り下げ、ステップ3は要望の確認、ステップ4が提案&クロージング段階となります。それぞれのステップで何故そのようなステップが必要なのか、背景も解説されていますので納得できるかと思います。
私個人の感想ですが、これらステップ1からステップ3までが状況質問段階にあたると思いました。
海外営業業務に当てはめて考える
このブログは海外営業員ブログですので、海外営業でよく起こる例に当てはめてみましょう。下記の例は本の内容ではありませんのでご留意ください。
例えば、海外からの引き合いのメールや問い合わせがウエブサイト経由で届くことがあります。よくあるのが、「製品Aについて価格を教えてくれ」や「製品Bのカタログを送ってくれ」、「製品Cの仕様を教えて」などのように相手が調査段階と思われるような依頼です。
そのまま、価格を教えてしまったり(この時点で価格を提示することはお勧めしませんが。。。)、カタログをそのまま発送してしまったら、そのまま音沙汰なく終わりでしょう。
ちなみに下記記事では問い合わせ時の状況質問について解説していますのでご参照ください。
まずは、問い合わせを受けたら、問い合わせの背景を聞かなければなりません。
万能なパーソナリティはアダルトな態度
話す相手の性格によって、話し方を変えることがあります。筆者は交流分析で「人間の心の構造は4つのパーソナリティで成り立っている」として、それぞれ4つのパーソナリティ(性格)には勝ち負け関係、つまり「じゃんけん」の関係があるとしています。
この4つのパーソナリティを使いこなして、相手よりも強い関係を持つパーソナリティに変化出来る営業員も少なからず存在します。そのような人は営業員として成功している方が多いと思います。
ただし、ほとんどの方は相手の性格を見極めて、自分の性格を器用に変化することは難しいと思います。
実は、性格を変化させなくても良い方法があり、それは「アダルト」です。アダルトとは「成熟した大人のパーソナリティ」です。交流分析では真ん中に「アダルト」があり、他4つのパーソナリティの真ん中に位置しているのです。勝ち負けに一切関係ない中立な位置です。
相手がどんなパーソナリティであろうと、「あなたがアダルトで接すると、相手もアダルトで返す」というのです。
確かに、私も覚えがあります。
「アダルト」は「視点を合わせる」と似ている?
ここから下は私の考えで本の内容ではありませんが、この「アダルト」という考えは、「視点を合わせる」に似ているのではないかと思います。本の内容からかなり逸脱しますが、思ったことを記したいと思います。
「感情的になったら負けだ」とはよく言われることですが、これはお互いにアダルトになれば建設的な対話が出来るということでしょう。
また、賛成か反対かの議論をしている時に、個人的な感情で反対をする人がいます。例えば、「この行事は面倒くさいからやめよう」などです。個人的な感情を抜きに組織として考えるならば、「面倒臭くても必要だからやったほうがいい」というケースもあるでしょう。
「個人的には嫌だけど、組織として考えるならばやらなくてはいけないな」、ということは皆さんも経験があると思います。
私も新卒時で働いた会社ですが、ある時期に深夜残業が多く、上司から「仕事が多く納期に間に合わせるためには残業して片づけるのが当たり前だ」と言われて、「連日の残業なんて冗談じゃない。そんなこと当たり前にするな!」と憤っていましたが、実際は心の中では上司の言うことは正しいことを認識していました。
こういった個人的な視点というの「感情」で見ており、組織的な視点は「アダルト」だと言えるではないでしょうか。
もし、あなたが議論をしていて、相手の反対もしくは賛成の内容が、「感情」的であると感じたならば、その発言者の視点を変えさせてみてください。「個人的な視点ではなく、組織側から見た視点で考えてみてください」と伝えれば、相手も間違いに気がついて「アダルト」になるかと思います。
社会人であれば、すべてをアダルトで接して、アダルトで考えなければなりません。相手がアダルトではないならば、アダルトにさせる必要があります。
ビジネスマンは「視点を合わせる」ことが非常に重要です。例えばビジネスシーンでの会議は、営業的な視点なのか、製造的な視点なのか、経営者的な視点なのかを皆が正しい視点に合わせて議論をおこない、個人的な視点で発言する人はほとんどいないと思いますが、職場の簡単な決め事などでよくあるのが個人的な視点による意見だと思います。「組織(または立場)として考えるならばどちらがいいか?」と考えるだけでも個人的な感情を消し去ることができると思います。
話がだいぶ脱線してしまいましたね。。。
総評
良い。
特に初めて営業をする人や営業成績が伸びない方向けの本です。既に適切な状況質問方法が分かっている人や営業成績が良い人にとっては当たり前の内容かも知れませんね。
「魔法のセールストーク」を用いた全プロセスの実践例もあり、非常に分かりやすかったです。また、最終章には、実践イメージトレーニングで、日常生活においてもこの「魔法のセールストーク」を使って訓練できるコツが記されているので参考になります。
マーケティングコンサルティングである著者の佐藤昌弘氏は心理学も勉強されている、とのことで、交流分析や右脳左脳の使い方、イメージトレーニングなどの解説は説得力がありました。
私は多くの営業本を読み漁ってきましたが、世の中には非常にゴミ営業本が多い中で、この本は良本だと考えています。ずっと手元に残して、たまに読み返す本となっています。最初でも2時間ほどで全て読めてしまうボリュームなので、2回目以降はスラスラと30分~1時間程度で読めるかと思います。読み返しやすい本と言えます。
堅苦しい文章ではなく、読みやすく、かつ読み返しやすかったです。
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