大型商談と小型商談の違い!大型商談で効果を発揮するSPIN営業術

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大型商談も小型商談も同じ営業スタイルでやっていませんか?大型商談でクロージングの多用してませんか?製品の機能ばかり説明していませんか?

今は製造業界で大型商談がメインの私も、昔は日本でブラック企業に勤めて深夜まで歩き回って小型商談をしておりました。今の業界に移ってからも、商談の最初でいきなりクロージングを連発するような事はしませんでしたが、大型商談と小型商談など特に意識せずに営業していました。

ある日、ふと手にした本を読むと、大型商談と小型商談を経験した私には目から鱗が出る内容でした。私の過去の営業スタイルを振り返ると、ふむ、なるほどな!と納得できる本で、大型商談を扱う営業員の基本として絶対に読んでおくべき本だと思います。

その本は日本語訳本「大型商談を成約に導く「SPIN」営業術」、原本ではSPIN Sellingとして営業界のベストセラー本となっています。

本のレビュー

世の中には営業に関する本が星の数ほど存在して、数多くのセールスのスーパースター達が自分達のテクニックを披露しています。しかし実際のところ、名選手が名監督になれない理由と同じで、彼らも何故売れたのか根本的な理由がよくわかっていないことが多いのです。

著者のニール・ラッカム氏が大学でセールスについて研究しているときに、実地調査の機会がやってきました。ある会社からの依頼で、その会社の営業員達のパフォーマンスを上げるために、実際の商談に参加して調査できる機会を得たのです。

以来、12年かけて様々な会社で35,000件の商談を調査して結果、ある事実が判明します。

大型商談と小型商談では営業手法が全く異なる!

そして大型商談で状況毎に4種類の質問を適切に使うと商談成立確率が上がることが膨大な調査結果から分かったのです。

さあっ!何でしょうね?その4種類の質問とは?

とても気になりますね。

その4種類の質問とは、、、

  • Situation Question(状況質問)
  • Problem Question(問題質問)
  • Implication Question(示唆質問)
  • Need-payoff Question(問題解決質問)

それぞれの質問の頭文字を取ってのが、本のタイトルでもあるSPINなのです。

何とこの本が初めて世に出たのは1987年です。セールスの世界では新しい営業手法が開発されるたびに顧客もそれに慣れていき、古い営業手法はすぐに通用しなくなっていくのが常ですが、なぜこのSPIN営業手法が現在でも効果を発揮するのでしょうか?

それは多くのセールス本と異なり、目先の営業テクニックだけを披露しているわけではないからです。多くのセールス本では、こう言った場合はこう言え!だの、この場合はこのように質問すべき!などとシチュエーション毎の対処法を述べたり、著者が書いたスクリプトをそのまま言え!的なケースが多いです。

おそらく多くの著者自身もわかってはいないのでしょうが、なぜそのように言うのか?なぜこのような質問が効果的なのか?が説明されておらず、著者の成功体験をそのまま伝えているのがほとんどです。これこそが、「名選手が名監督になれない」理由です。本当に必要なのはその背景の理解と理論なのです。

対して、この本は大学の研究者で、後に研究者を辞めて自身のセールス調査会社を作った著者が、長年多くの企業のセールスに同行して調査した結果が基になっています。大型商談のおける営業の基礎を体系づけて説明している点が他の営業テクニックだけに焦点を当てた本と決定的に異なり、発表から何十年経った現在でも色褪せずに通用するのです。

また、巻末には著者が実施した調査報告やデータも一部付録しており、ある調査ではデータが不完全で結果が芳しくなかったことも公平に載せています。これは読者からの信頼を得るための戦略なのかどうか分かりませんが、これによりSPIN営業手法に対する信頼性が高くなっている要因とも言えます。

私はこのSPIN営業手法を、営業員の基礎編として最初に覚えさせるべき営業手法として考えています。

新人にはOJTよりも座学を最初に実施したほうが成長も早いと思います。

大型商談と小型商談

まず、大型商談と小型商談での営業手法は全く異なります。小型商談で成績が良かった営業員が大型商談では成績が振るわないこともよくあることです。

大型商談とは高額で決定プロセスが幾つもある商談で、小型商談とは少額で購入決定が簡単にできる商談です。日常生活面で考えると、購入者がその購入を失敗したときに誰にも知られずに隠せるものが小型商談、対して失敗したときに周囲の人に知られてしまうものが大型商談と考えると分かりやすいです。

PCを購入したがスペック的に不十分だった、勢いで買ったブランド物のアクセサリーが結局気に食わなかったので使っていない、など失敗した買い物がよくあるかと思います。しかし、それらは自分が隠しておけば誰にも失敗が分からず、結局自分のお金を失っただけです。自分の周りへの影響が非常に限定的です。

しかしながら、家を買って失敗した、家族の車を買って失敗した、となると失敗を隠すことはできず、家族には失敗がばれてしまいます。当然、その失敗は家族にとっても、家に住みにくい、車が乗りにくいなど影響がでてしまうので、もはや自分1人だけの問題ではなくなってしまいます。自分の周りへの影響がかなり大きく生じます。

前者が小型商談、後者が大型商談時に購入者側が持つ責任の重さとなります。

もし、あなたの部署でプリンターを購入して失敗したとします。しかしそれは価格面含めて影響は非常に限定的です。その部署、そのフロアーの人たちには失敗が知られてしまいますが、全社的に考えれば影響はたいしたことはないでしょう。あなたは多少恥をかきますが会社に居続けられて、いつしか皆もあなたの失敗を忘れてしまうでしょう。これが小型商談で失敗した場合の責任です。

もし、あなたが工場の老朽化した設備を新しい設備に更新したが、逆に生産性が落ちてしまい現場からのクレームがあったとします。あなたの失敗の影響は大きく、全社的に及びます。生産計画が遅れて、営業部門では納期遅れで顧客からクレームが殺到、売り上げも当然下がります。アメリカであれば、あなたの机は翌日にはないでしょう。You are fired!(お前は首だ!)です。これが大型商談で失敗した場合の責任です。

つまり、簡単に理解すると、その購入に対する失敗の責任問題が生じるか、生じないかの違いとなります。

小型商談においてクロージングを多用することに効果がある理由は、購入で失敗した時の責任が軽いことから購入者側も比較的結論を出しやすい、という心理があります。

大型商談においてはクロージングの効果が薄く、逆効果になることも、SPINの調査でも判明しており、小型商談とは全く異なる営業をしなくてはならないのです。

4つの質問 SPINとは

Situation (状況質問)

状況質問とは、例えば会社概要、引き合いの背景、所有設備、購入時期、予算など相手の現在の状況を知るために問う質問となります。

多くの場合、初回打ち合わせ時の最初の段階で質問することになるかと思います。

まず、相手をよく知る!ための質問です。相手を知らなければ製品やサービスは売れないのです!

しかし、この状況質問は注意が必要です。

相手があなたに情報を一方的に渡すだけになってしまうため、質問し過ぎると相手がイライラしたり、警戒したりする可能性があります。また、状況質問をずっと続けても商談は一向に前に進みません。

聞きたいことは予め準備しておいて、いくつかの質問をした後にはすぐに次に問題質問に移りましょう。

Problem (問題質問)

問題質問とは、状況質問で得た情報から相手が抱えている問題点や支障、不満などを聞き出すための質問となります。この問題質問によって相手が解決したい現状の問題点、不満等が分かってきます。

例えば、このAという設備で何か不満に感じている点はありますか?何に困っていますか?不満はありますか?などと聞きます。

それらの回答からあなたの製品やサービスで解決できるものがあれば、万々歳。製品やサービスで解決できる点を説明して、あとはクロージング、クロージング。。。。と、いかないのが大型商談です。

小型商談であれば、問題質問で判明した相手の問題を解決できる手段、機能を十分に説明すれば、あとは数々のクロージング技術を駆使して商談成約の可能性が高いかもしれませんが、大型商談ではこのやり方は通用しません。

SPIN営業術の調査結果において、大型商談においては効果が薄いことが証明されているのです。

なので、次の示唆質問が重要となります。

Implication(示唆質問)

示唆質問とは、問題質問で得た情報や相手からの回答から推測した将来発生し得る潜在的な問題を問う質問となります。この示唆質問によって相手が気が付かなかった潜在的でかつ重大な問題を相手に認識させるようにします。

例えば、下記のような流れで示唆質問をしていきます。

  • 老朽化した設備のメンテナンス費用はどの程度になりますか?
    → 相手の回答:たいしたことありませんよ、部品交換するだけで大抵は直ります
  • この設備の保守部品はメーカー在庫がない場合が多くないですか?
    → 相手の回答:まあ、古い設備なので在庫がなく納期がかかるケースも多いですね
  • 部品納期が遅く、この設備が使えない場合、生産にどの程度の影響がでていますか?
    → 相手の回答:部品が届かずに一部生産が止まることもありますね。納期に間に合わない場合は外注を使用しますね
  • 外注を使用すると費用面以外でも、品質管理や納期管理に影響がでませんか?
    → 相手の回答:確かに外注納期をコントロールすることができずに納期遅れをする場合もあります。品質も一旦こちらで再確認するので結構手間がかかっていますね。
  • 古い設備を扱えるオペレータは少ないのではないでしょうか?
    → 相手の回答:リタイヤ目前の人がほとんどで、その人たちがいなくなれば大変ですね。今は若いオペレータにもトレーニングしています。
  • 古い設備向けのトレーニングに掛かる時間はどうですか?
    → 新しい設備と違って、段取り性も操作性も悪く、時間はかかっています。
  • トレーニングで時間や費用が多くかかっているということですか?
    → 相手の回答:そう考えると結構な時間や費用がかかっていますね。
  • 老朽化した設備なので故障すると部品納期も長く、復旧に時間がかかり、生産計画に影響が出てしまう。外注を使用すると品質チェックにも時間がかかり、また外注納期が遅れれば製品納期も遅れてしまう。そして、この設備を扱えるオペレータも少なく、トレーニングに時間と費用が掛かっている、ということですね?
    → そうですね。これは何とか対応しないといけないな。

具体的には相手の回答をさらに深掘りして示唆質問をしていく感じです。問題質問で問題を見つければ、その問題が引き起こす影響を見つけて示唆質問する、という流れです。

この示唆質問は相手が気が付かなかった問題を認識させることを目的とした質問となります。解決しなければ将来的に深刻な影響が出てしまう問題をどんどんと炙り出して、早く解決しなければ大変な問題だ、と相手が真剣に考えさせるプロセスとなります。

Need-payoff(解決質問)

解決質問とは、示唆質問によって発見した潜在的な問題に対する解決を問う質問となります。

この解決質問によって、相手が示唆質問で気が付いた潜在的でかつ重大な問題を解決できる手段を相手に認識させます。

この解決できる手段はあなたの製品やサービスで提供できるものでなくてはなりません。もし、あなたの製品やサービスで解決できない手段を相手に認識させてしまった場合、相手はあなたの製品やサービスには振り向かず、その解決できる手段を提供できる競合他社へと向かってしまう可能性があります。

例えば、下記のような流れで示唆質問をしていきます。

  • 設備復旧しやすければ保守部門にとっても負担が軽減されるのではないですか?
    → (質問の背景)あなたの設備には遠隔診断機能がついている
  • すべての部品が翌日には配達されるとしたら外注手配もかなり少なくなりますね?
    → (質問の背景)オンラインで翌日配達できる注文システムがある
  • トレーニングの時間が少なくなったとしたら、その空いた時間で何ができそうですか?
    → (質問の背景)オペレータは画面の指示にしたがって操作すればいい対話式ソフトがついている
  • 設備の稼働状態や現在の加工品、加工数などの情報は生産管理や納期を管理する点でもメリットがありますか?
    → (質問の背景)生産状況がリアルタイムでわかるIOT機能がついている

実際には相手との会話の中で示唆質問と解決質問を混ぜながら質問していくことが多いです。解決質問が一通り終わったら、念願のプレゼンとなります。今までに判明した新たな脅威となる問題に対する解決方法を思う存分に提案しましょう。

ちなみに示唆質問と解決質問の簡単な見分け方は、本にも載っていますが、示唆質問が「暗く」、解決質問が「明るい」イメージを持つとよいです。示唆質問は新たな問題を認識させることですので「暗い」、解決質問は問題を解決させることですので「明るい」というわけです。

利点と利益

あまり、本の内容を書いてしまうのもアレですが、利点と利益の違いについても正確な理解が必要です。

利点とは、

製品やサービスがどのように顧客に役立つか、に対して

利益とは、

製品やサービスを使って示唆質問によって明らかになった重大な問題を解決できるもの、となります。

SPIN営業術の調査によると、小型商談では利点をたくさん説明することで商談成立の確立も上がりやすいですが、大型商談では利点ばかり説明すると商談成立の確立が減る傾向にあり、利点を言うことで逆に反論を招いてしまう危険性もあるので逆効果のようです。

反面、利益を述べることは大型商談(小型商談においても)非常に重要で、商談成立の確立が上がる結果が出ています。

私は最初のころは、とにかく機能を説明しまくっていました。すべての機能を説明していけば、相手も納得して買うだろうと考えていたのです。要は相手の問題を解決させる提案ではなく、機能の説明をするだけで、相手自身がその機能の用途を考えさせるような営業をしていたのです。

クロージング

SPIN営業術では、クロージングがそれほど大型商談では効果がないことも証明されています。クロージングを多く使えば使うほど商談成立の確立が下がります。

もちろん全く必要がないということではなく、商談の最後の最後には必要となるケースもあります。

ただ、示唆質問と解決質問ですでに相手は今まで認識していなった重大な問題を解決しなければならないと考えれていれば、クロージングは相手の背中を押す程度のもので、実際はあなたの解決策に乗って商談が成立するはずなのです(と、思います!)。

大型商談でのクロージングの検証結果についてのデータはぜひ本を読んでみてください。

まとめ

  • SPINとは4種類の質問
    • Situation Question(状況質問)
      会社概要、引き合いの背景、所有設備、購入時期、予算など相手の現在の状況を知るために問う質問
    • Problem Question(問題質問)
      状況質問で得た情報から相手が抱えている問題点や支障、不満などを聞き出すための質問
    • Implication Question(示唆質問)
      問題質問で得た情報や相手からの回答から推測した将来発生し得る潜在的な問題を問う質問
    • Need-payoff Question(問題解決質問)
      示唆質問によって発見した潜在的な問題に対する解決を問う質問
  • 大型商談では、示唆質問と解決質問が重要で商談成否にかかわる
  • 大型商談では利点ではなく、利益を語れ!
  • 大型商談においてクロージングの多用は逆効果

大型商談を成約に導く「SPIN」営業術 [ ニール・ラッカム ]

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