交渉術が学べる本!「Ask for More」10個の質問で問題解決

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この本は、2020年春に米国で出版された交渉術の本ですが、2023年4月現在において日本語訳は出版されていません。英語で読むしかありませんが頑張って読む価値はあるかな、と思います。

営業本ではないですが、営業時にも活用できる内容でした。

本のレビュー

著者Alexandra Carter氏はコロンビア大学ロースクールの調停クリニックでDirecrorを務める女性弁護士で、法律の Clinical Professor (実習指導教授)です。

私がこの本を知ったきっかけは交渉術に関するPodCastを聴いていた時で、たまたまCarter氏がゲストとして呼ばれていたからでした。

弁護士で、かつ大企業間の紛争の調停人や連邦職員、国連職員達に指導するだけあって、明瞭で分かり易く、相手に理解させるようにゆっくりと、かつ自信溢れる感じで話すCarter氏に興味を抱いたのでした。

話し方を真似したい!私のそのように話したい!と感じた私は、Carter氏の話し方を真似するためにPodcastチャンネルで彼女がゲストとして出ている回をほとんど全てダウンロードして聴きまくったわけです。通勤の車ではいつもダウンロードしたPodcastをかけてシャドーイングしたり、顧客と話す時にはCarter氏の話し方を意識しながら話したりしましたが、まだまだCarter氏の喋り方はマスター出来ていません。。。

Carter氏が教える交渉術は企業間紛争から日常生活、子供相手にまで全てに適用出来るものとなっています。

ただし交渉相手からいくら金を取るかとか、いかに相手を説得させるか、ねじ伏せるかといった一般的に我々が考えるような交渉術ではありません。交渉とは、相手に勝った、負けたというものではなく、相手の関係を操舵するものだとCarter氏は考えています。

この本は交渉時に使う10個の質問で構成されて、前半5つは自分自身への質問、後半5つは相手への質問になります。この自分自身への質問に全て答えを出さなければ交渉のテーブルに着いても従来通りの交渉、すなわち勝つか負けるか、生きるか死ぬか、一方が得してもう一方が損をする、そんな話し合いになるだけになります。

大学教授らしく、自分自身への質問の回答を助けるヒント、考え方も教えてくれる。さあ、これが質問だ、答えなさい!で終わらりません。きちんとCarter氏が我々の考えを整理してくれて、かつ心の奥底に隠していた感情まで吐き出させてくれます。そして交渉相手と対峙する時には何を根本的に解決しなければならないのか、何をすべきかが分かっている状態にしてくれます。

また交渉相手にする質問も基本的には自分自身にした質問とほぼ同じです。相手にも本当に解決すべきこと、本当にしなければならないことを理解させなければなりませんが、それについてもCarter氏はきちんとテクニックを教えてくれます。

日常生活でも気をつけたいと思うテクニックも多く学べることが出来ました。例えば、相手への質問は回答がイエスかノーになるクローズドクエスチョン(例えばDoで始まる質問)でなくオープンクエスチョン(WhatやHow)でするなど。これは多くの本でも言われていることですが、オープンクエスチョンを使う理由は、相手から多くの情報が得られるからです。また、沈黙も相手から情報を多く出させるテクニックでもあり、そのようなテクニックも紹介してくれます。

英語的に勉強となったのが、「Why」で始まる質問は相手が警戒、もしくは敵意の感情を生じさせるとのことで、Why did you do that? (何であんなことしたの?)では相手がムッとする可能性があるということ。代わりにTell me what went into that decision (そんな決断になった理由を教えて)の方が良いとしており、私も読んで以来、Whyはあまり使わないようになりました。

Carter氏は「交渉」はSteering (操舵)だと言います。Steering Relationship、即ち「相手との関係の舵取り」をいかにするかで良い交渉結果が得られる、として、交渉相手は交渉が終われば味方にしなければならない存在だと言います。

営業員にとっても、顧客の購買責任者とタフな交渉をすることがありますが、交渉後に味方にしておくと、それ以降も贔屓にしてくれる場合もあるので全くその通りだと思います。

営業本ではありませんが、営業にも役立つ本で読んでよかった、と思いました。

私が気に入った箇所

この本では10個の質問から成り、前半5つは自分自身への質問、後半5つは相手への質問となります。

ここですべての質問を説明すると時間もかかるのと、本の内容を詳しく書いてしまうのもいけないことですので、その中でも私にとって印象深く、ビジネスや日常生活においても役立っている質問がありましたので紹介したいと思います。

What’s the problem I want to solve?

What’s the problem I want to solve? 何の問題を私は解決したいのか?

表面上の問題ではなく、あなたが本当に解決したい問題は何かを自分自身に問うのです。

では、どのように解決すべき問題を定義すべきでしょうか。

例えば、ある顧客に納入した製品の不具合が多く返品を求められているがあなたの会社としては返品は受けられない、というケースの場合。

「納入した製品の不具合が多く返品クレームがあるが返品は受けられない」という問題を解決したいとしたとします。

そして、その文章からすべてのネガティブな表現を取り去り、ポジティブな表現に入れ替えます。

「顧客が納入した製品に満足して、そのままお使いいただく」

そしてHow, What, WhoやWhenで始まる疑問文にします。

「顧客が納入した製品に満足して、そのままお使いいただけるにはどうすればいいのか?」

このようにポジティブな表現で解決したい問題を定義するのです。

最初に定義した「納入した製品の不具合が多く返品クレームがあるが返品は受けられない」と比べて、遥かにポジティブで、解決すれば双方にとってWin-Winとなる問題となったと思います。

本には書かれていたか忘れてしまいましたが(すみません)、私は関係者全員がWin-Winとなる解決が重要だと考えています。

どちらかが勝利して、どちらかが負ける解決を嫌う方にとって、このような問題定義の考え方は非常に合っていると思います。

残念な箇所

今読んでいる章のタイトルがそれぞれのページに載っていない

私はハードカバー本を購入したので、ソフトカバーについてはわかりませんが、今どこの章を読んでいるのか分からなくなります。

親切な本だと、各ページにその章のタイトルが小さく、ページ上や下にページ数とともに記載されているものですが、この本では著者名と本のタイトルのみで(ページ数はもちろんあります)、該当する章を探したいときに苦労します。わざわざ目次を一旦開いて探すので面倒でした。

各章のまとめが、全く「まとめ」になっていない

営業にも使える良い本でしたが、惜しむべきは、各章の最後のまとめが簡単すぎて、まとめになっていない点でした。通常このような本は、章の最後で、箇条書き的にまとめてくれるのですが、この本ではそのような「まとめ」がないのが残念でした。

特に第一章のまとめは、たったの3行でした。

「まとめ:解決したい問題を定義することは交渉術を会得するために非常に重要です。さあ、あなたは問題を定義することが出来たので、次の章にいきましょう!」では、な~んにもまとめになっておらず、読み返す時に参考にもなりませんっ!

このような本は定期的に読み返したりするものですが、手っ取り早く内容について記憶をよみがえらせたい時には「まとめ」が非常に有効で時間も節約できるだけに、非常に残念でした。

Ask for More: 10 Questions to Negotiate Anything ASK FOR MORE [ Alexandra Carter ]

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